10年前 新聞奨学生の死 〜迷宮の中〜

肉体と精神のキャパシティは破綻寸前だった。
口からは「いやだいやだ・・・」と自動的に繰り返され、目からは涙ばかり出てくる。

ああ自分はだまされたんだ と気付き始めていた。

級友と冗談で「俺らは新聞奨学生っていうか新聞奴隷だな」
とよく話した。その通りなんだと思えてきた。

級友には奨学生でない、普通の学生もいた。
彼らには住む部屋もあり、寝る時間もあり、遊ぶ時間もあった。
もちろん勉強する時間も、課題を制作するための調査時間も、
PCもインターネットも(当時インターネット回線を契約するには権利を買うなど初期導入費用が高かった)。おおよそ学業に必要なものは全て揃っていた。

学生なんてものは怠惰なもので、二日こないで一日通学する程度でもなんとかなったりする。羨ましくてしょうがなかった。

こちらが就職活動をする暇もなく忙殺されている間に彼らはカラオケ朝オールに行き、遊びに行き、課外授業に参加していた。中には着実にスキルを身に着けるものもいた。
就職も決めていた。


世の中は不公平なんだな。
何度もつぶやいた。

ぼろぼろの精神と意識の中でただただ 涙が止まらなかった。


抜けられない深い迷宮へと入りこんでいた。


そして絶望に値する事件が起こる。